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(――カタン。)



(カタン、と小さな音がした。)


(…そんな気がして目蓋を上げた所で、己が寝入っていた事に気がついた。)



ぼんやりとした思考のまま首を廻らすと、馴染みの使用人の姿が見えた。女中頭のノーラだ。
動いた拍子に胸元に開いたまま乗せられていた本が音と立て、落ちる。
「あら、起こしてしまいましたか?――申し訳ありません」
父からの書類を置きに来ていたのであろう。物音に気付いたノーラが文机から離れそっと頭垂れる。

窓から差し込む麗らかな光と、その逆光を受けるノーラ。
(――なんだ、まだ夢の続きみたいではないか)
つい先程まで見ていた懐かしい夢に思いを馳せ、意地悪な笑みをつい、浮かべてしまう。

「ノーラ」
「はい、坊ちゃま」
名を呼ぶと、即座に応える声。
御用でしょうかと近寄る気配を感じつつも再度眠気が襲って来て、ゆるゆると目蓋が落ちていく。

「愛しているよ」

ひと言だけ告げて、睡魔に耐え切れずに瞳を閉ざす。
ご冗談を申してばかりだからいけないのだとか、ご婦人方がどうのだとか小言を交えつつも、老女は気を悪くした様子も無く品良く小さな笑い声をたてる。いつも優しい老女が笑うと嬉しくなるのは幼きあの日から変わらなくて、自然と口元が緩むのを感じる。
うとうととまた眠りに落ちる前に、眠るならば寝台へとの小言が聞こえた気がするが、聞こえなかった事にした。たとえ寝台に行かずとも風邪など引かぬ事などわかっているのだ。

少し後にはすぐにほら。
優しい老女は柔らかな毛布を掛けてくれる。
とても優しい木漏れ日の香りを感じた。

小言が心地好く思えてくるなんてどうかしていると思いつつも、眠気には抗えず、落ちていく。





←----------------------- キリトリ -----------------------→
ばばこん。
因みに、続きがあります。


Halbschlaf:夢うつつ
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