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――赤い花、ひとつ。
雪に埋もれて――



 ――ドン。
 背後からの思わぬ衝撃。軽く飛ばされて、地に膝と手を着く。
 自然に振り返ったその目は、俄かに信じられぬものを見たと見開かれた。
 降り積もる真皓の雪の上に赤い、紅い――命の彩。

 空気を吸い込んだ喉がヒュッと鳴った。
 自分でも訳がわからない儘に走り、レイピアを抜き放っていた。
 最後に振り絞った一撃だったのだろう。既に動かぬモノとなった其れにレイピアを突き刺した。何度も、何度も。何度刺しても変わる事がなく、穿たれた其れが何かを発する訳も無い事を知りながら、何度でも。
 肩で息をして屍以下に成り下がった其れから視線を外し、『彼女』へ振り返る。手から力が抜け、レイピアが音も無く雪の上に刺さった。
 真白の美しい毛並みが自慢の『彼女』。その毛並みは朱に染まり、命の雫は雪へと零れ溶けていた。
 真皓の雪に、真白の毛並みに、赤い赤い、花が咲き。小さな花は大輪へと開花する。

「あ、――」
 いやだ。嫌だ厭だ否だ。
 消えてしまわないで。

 上手く息が継げず、言葉と成らない。
 『彼女』の傍らに膝を着き、触れようとした所で思い留まった。
 手が、汚れている。『彼女』を奪った卑しいマスカレイドの返り血で、汚れていた。
 愛しいその毛並みに、汚れた手では触れられない。
 血に染まった手袋を捨て、手を伸ばす。まだ暖かさが残る躰に安堵するが、理解している。『彼女』は既に助からない。自分の慢心が招いた結果。身を挺して庇ってくれた『彼女』。
「           」
 震える唇で、名を、呼ぶ。
 ひくり、喉が鳴った。
「           、           」
 何度も、何度も。
 もう駄目だと、助からないと知っていても。壊れた蓄音機の様に繰り返した。
 骸と化した愛豹に、語り掛ける様に、優しく優しく、触れて。
 触れれば触れるほど、名を呼べば呼ぶほど、それは確かな形となった。還らず、戻らず。色為す想いは絶望。
 失った物が己から流れ出るように、瞳から暖かな滴が零れては、じわりと血を滲ませ消えていった。






 なんて、私は愚かなのだ。何故、あの時背を向けたのか。
 己の慢心と後悔。喪失による絶たれる望み。
 いや、だ。こんなのはまちがっている。私の『彼女』が、こんな……。
 幾度も嫌だと繰り返す。半ば認めてしまっている自分を否定して、嫌だ、と。
 確実に温もりを失っていくその躰を温める様に触れ続ける。撫でていれば暖かくなるかもしれない。しかし、それが虚しい望みにすぎぬ事も理解していた。それでも、やめられなかった。
 認めたら諦めた事になってしまう。諦めたら認めた事になってしまう。『彼女』はもう居ないのだと、その事実が確定してしまう。
 そんなのは嫌だった。認められなかった。

 変化があった。
 ぴくり、と。動く、気配。
 『彼女』の体が動く。その感触が手に伝わったのだ。
 知っていた。気付いていた。でも、だけど、と。一番最初に諦めた事を思い出す。
 生きている。まだ。孕んだ『彼女』のもう一つの命が生きているのだ。
 一つの希望が生まれた。考えるより早く懐から短剣を取り出して、一言詫びてから腹を裂く。そこには臍の尾で繋がった幼獣の姿。産声も上げず瞳も開かぬ其れの臍の尾を切り、短剣を捨て、震える両手で包みこんだ。
 ほのかに暖かい。ひくり、と力なく動く四肢。命が、あった。
 傍らの雪を握りしめて固め、取り上げたばかりの幼獣の体を撫で清める。汚れをとると、母である『彼女』によく似た美しい毛並み。瞳はまだ開かないけれど、きっとよく似た顔だちをしていることだろう。
 まだ白い息を吐き出していない仔豹の背を手のひらでこすり、呼吸を促す。手のひらで包み込んだ体が、この寒さに負けぬようにと何度も、何度も丁寧に繰り返した。
 幼獣が四肢を震わせて口を開けた。白い呼気が漏れる。小さく甲高い声で、母を求めてか鳴いた。
「嗚呼……」
 己が漏らしたのは安堵の吐息なのか、懺悔の言葉なのか、わからない。
 硝子を扱うように慎重に、愛しさを込めて大切に。両手で仔豹を顔の高さまで持ち上げ覗き込むと、愛しさが胸を満たし、涙が零れた。


 小さな小さな獣は、掌の中で、ぴぃ、と鳴いた。




 私が奪って、私が育てる命。私の小さな希望。



 あなたを永遠に愛すると、誓います。

 ありがとう、私の Schneewittchen ――。



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 この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『エンドブレイカー!』用のイラストとして、シェダルPL・アルトゥールPLが作成を依頼したものです。 イラストの使用権はアルトゥールPLに、著作権は鈴苑絵師候補生に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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←----------------------- キリトリ -----------------------→
シュネママとシュネたんとアルさんのお話。アルトゥール20歳の冬。
2年くらい前にSS書いて、ずっとイラスト欲しくて…合う絵師さんを探していた。
鈴苑候補生さまの1枚目の納品でティーンときて、久しぶりに窓を狙った。
発注する時はすごくノリノリで「絶望しろ、アルトゥール!」だとか「悲鳴を上げろ、アルトゥール!」とか、とてもご機嫌に発注文確定ボタンを押しましたとも。
想像どおりの表情でとても満足しました。
……水着コンの日で驚かせてしまった人も多かったようで、ごめんなさいでした(´>(ェ)<`)
一枚目は絶望を。二枚目は絶望が希望へ変わる瞬間を描写して頂きました。
シュネたんは生まれてすぐにアルトゥールを救うのです。

『彼女』の部分には彼女の名前が入るのだけど、アルトゥールはその名を封印したから…空白だと穴あきだらけになってしまうので。

物凄く自己満足イラストです。ずっと欲しかった。
鈴苑候補生さまは本当にありがとうございます。


Schnee der Hoffnung:希望の雪
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