EB
――夢を見た
真皓の薔薇園で、楽しそうな高い声が響く。
日傘を差した中年の女性とまだ幼い銀髪の少年が手を繋ぎ、白薔薇園を散策していた。
滅多に外に出ることも無いのだろう。銀髪の少年の肌は雪のように白く、真皓の薔薇園に溶けてしまいそうな程儚く見えた。
「ばあや、ばあや」
「はい。何でございましょうか、坊ちゃま」
真皓の薔薇園で、楽しそうな高い声が響く。
日傘を差した中年の女性とまだ幼い銀髪の少年が手を繋ぎ、白薔薇園を散策していた。
滅多に外に出ることも無いのだろう。銀髪の少年の肌は雪のように白く、真皓の薔薇園に溶けてしまいそうな程儚く見えた。
「ばあや、ばあや」
「はい。何でございましょうか、坊ちゃま」
「ばあや。ばあやは、いつまで私といてくれるのだ?」
今日のおやつを尋ねるような口調で無邪気に、少年は大きな瞳で彼の大切な女性を見上げ尋ねた。
それは、脈絡の無い、突然の問いだった。女性は答えを用意していた訳もなく、驚いた表情で立ち止まる。
手を引いてくれていた女性が立ち止まり驚いた表情をしている事に気付いた少年は、不思議そうに女性を眺め、自らも立ち止まる。どうしたのだろうと首を傾げるが、直ぐに言葉が足りなかったのだろうと思い到り、心得たと言わんばかりに小さく頷き話を続けた。
「母様が先日仰ったのだ。ばあやだっていつまでも一緒にいてくれる訳ではないのよ、って」
「坊ちゃま……」
「いつまでもって、いつまで? ねぇ、ばあや。ばあやは私と、いつまで一緒にいてくれるのだろう?」
純粋な好奇心からの問いなのだろう。最愛の母の口調を真似しつつ、少年は無邪気に問うた。
「とてもとても、先のお話ですわ。坊ちゃま」
「ばあやがいなくなるなんて、私には考えられない」
その答えでは不服だと、少年は子供らしく拗ねた調子でぷくりと頬を膨らま俯いてしまう。
両親の前ですら子供らしい姿を取らない少年の、ただただ子供らしい姿に愛しさがこみ上げてくるのを抑えきれず、女性は純粋で残酷な問いをひと時忘れ、つい笑みを浮かべてしまう。
「坊ちゃまがご立派に成長されて、ばあやが要らなくなるまでは……どんな事がありましょうとお側にお仕えさせて頂きたいと思っております」
「では、私がどうなったら、ばあやは私が立派に成長したと思うのだ?」
「そうですわね……坊ちゃまがお家を継がれ、ご結婚なされて、お世継をもうけられましたら……このノーラ、坊ちゃまを誉れと思い、安心してお側を離れる事も叶いましょう。それまでは坊ちゃまが嫌がろうと、お側を離れる心算は御座いませんわ」
ご安心あそばせと、ゆっくりと優しい声音で、少年に言い聞かせる。
屈んで少年と目線を合わせ、少年の白くたおやかな両の手を壊れ物でも扱うように、そっと包む。自分の問いへの答えと優しく暖かな感触に少年の不機嫌さは拭われ、パッと微笑んで顔を上げる。
「そうか」
物分り良く頷いた少年に安堵して、ホッと笑みが漏れた。聡い少年が理解してくれた、と。
しかし、少年はニコリと微笑んで、言葉を続ける。
「……ならば私は、ばあやの言う立派な私になどにはならない」
「坊ちゃま……」
「わかっているよ、ばあや。それは、私へ課せられた義務なのだろう?……義務を為さねばならない事も、わかっている。しかし、遅らせることは可能なはず」
義務を疎かにする心算も無いけれどと、少年らしからぬ大人びた顔で告げて。
一瞬後にはニコリ、と極上の笑顔を見せる少年。無邪気で、どこか儚げで、この白薔薇園にとても似合いの笑みを。
ただ、無邪気の笑みに反して意思を秘めた瞳の菫色は濃く、彩色を放っていた。
「ねぇ、ばあや。ずっと一緒にいて」
「坊ちゃま……」
少年は、繋いだ手が離されないように、ぎゅっと力を込める。
「私から離れるだなんて、許さない」
(――命令、だよ)
幼い唇で紡がれた言葉には、小さな小さな棘。
そして、甘い毒を孕んでいた。
(――いなくなるなんて、イヤだよ)
――真昼の夢を
「ノーラ」
「はい、坊ちゃま」
「愛しているよ」
家族として。人として。掛買いの無い存在として。
(――ああ、そうか。私はあの頃からひとつも変わっていないのか)
――あなたの優しさに甘えて、夢に堕ちていく
←----------------------- キリトリ -----------------------→
こんにちは、ババコン!(挨拶)
一昨日からブログを書こう書こうと思いつつも文章を書く気が起きなかったので、書き溜めてある中から投下。
『Halbschlaf』と繋がってますです。
アルさんは覚えていても、何も言いません。大抵の場合、聞かれないと言わない事が多い。からかう時以外は。なので、ふと思い出したときに一言だけ呟く事も多いです。
一日中本読んで寝て過ごしたいくらい、他の事が面倒くさいと思う子です。シュネーたんと星霊たんと家族(使用人含)の事は別格だけど。
あと、白にするのもアレかなぁと思ったので、白菫に。linenにしたら、本当に見えなかったので、あえてもう少しだけ見える色に。
○年前のアル坊ちゃん。髪を大人しく整えられるので、毛先がパッツンしてます。
ファイル名(描いた日付がファイル名)的に8月のようです。
文章書いてから絵を描く事が多いので、文も8月から放置してたんだろうなぁ。
一個のtxtファイルにぐちゃぐちゃ続けざまにぐちゃぐちゃ入ってたりするからよくわからなくなるです。
そして8月に描いた物だけど、例によって例の如く彩色しないで置いてあったものに上から水彩。銀髪好きさー!
一つの事が面倒になると、アレもコレもと面倒になるのは悪い癖。
何とかしたいなぁと思いつつ、すごい勢いで冷めていく。
Direkt zusammen:ずっと一緒に
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