Magnolia

紅茶はこんなにも香り豊かだったとか
紫煙に煙るこの都市で清々しく感じる程度には
気分が良いです。

「次」
沢山の可愛らしい洋服を並べ、一瞥。そしてまた短く声を掛ける。
最近の流行なのだと服飾商が歌っては並べていき、何度も何度もそれを繰り返す。
愛しい想い人の姿を思い浮かべ似合いそうなものをと選んでいるものの、どれもいまいちパッとしない。

「アルトゥール様、此方はいかがでしょう？」
「あら、此方の方が可愛らしいですわ」
悩んでばかりの主に若いメイド達が可愛らしい洋服を奨めるが、男は中々首を縦に振らない。眉間の皺が深く刻まれるばかりである。
毎日新しい服飾商を呼んでは繰り返される行為に、初めは可愛らしい服を見ては楽しんでいたメイド達の顔にも疲れの色が浮かんで見えた。
主人である男も思い悩んでいるのか溜息の数が増え……
「坊ちゃま」
懸念した侍従頭がまだ若い主へと声を掛ける。



「差し出がましい事を申し上げますが、宜しいでしょうか」
「なんだ」
「坊ちゃまのお目に適う物がござらないのでしたら、一からお作りになれば宜しいかと」
「……それは考えもしたのだが、まだ間に合うだろうか」
「お任せくださいませ。坊ちゃまの願いを叶える事こそが我々の至上の喜びですわ」
「ふむ……」

アクスヘイムで付き合いのある服飾家に連絡を取り、ラッドシティでの有名な服飾家を紹介された。
自分が思い描いている形等を告げ、デザインを描いてもらい、望む形のワンピースを作らせる。

「坊ちゃま、サイズは……」
「問題ありません」






「あんなに一つの贈り物を悩んでいらっしゃるアルトゥール様は初めて見たわ」
「ええ、本当に。何時もはパッと選んでしまいますのにね」
「女性への贈り物なら尚の事、流行の物はご存じでいらっしゃるもの」
「……きっときっと、とても可愛らしい方なのね」
「我が家の坊ちゃまが夢中になる方ですもの」



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と言うのが今から一ヶ月前の話。
アルさんならスリーサイズも把握していて、オーダーメイドで作るだろうな、と。